この講義では東北大学の歴史を学ぶ。東北大学は1907年に設置された百年以上の歴史を持つ大学であり、2007年には創立百周年を迎えた。この講義の講師は、百周年記念として編纂された、東北大学百年史を中心となって担当した中川学講師・高橋禎雄助教だ。
この講義では、東北大学の創設から現在までを、資料を交えながら15回に渡って振り返る。創設までの政治的経緯から、大学の拡充、戦争との関わり、学生運動などの歴史的なイベントを当時の情勢や雰囲気などの歴史的背景も併せて実際の資料やエピソードなどを紹介しながら解説してくれる。
講義では、東北大学のあまり知られていない歴史も教えてくれる。今でこそ日本のみならず世界にも名立たる大学である東北大学だが、栄光の歴史のみを辿った訳では無かった。実は東北大学設置の建議は何度も採択されていたが、不況などによる資金不足でなかなか設置までには至らなかった。そして古河財閥の寄付を取り付けて設置へと至ったが、その寄付は古河財閥傘下の古河鉱業が起こした足尾鉱毒事件への批判をそらすためのものだったという。あまり表立って言われない様な歴史を知ることができるのも魅力の一つだ。
この講義は日本の近代史を東北大学を主人公として駆け抜ける大河ドラマといってもいいかもしれない。東北帝国大学の設置には、帝大を増設して教育の拡充を図りたい政府、地元に帝大を招致しようとする県、そして批判をかわそうとする古河財閥という三者の思惑があった。東北大学の歴史の中には、「歴史で習ったあの人がこんなところに」、「あの出来事はこう影響を及ぼすのか」というような、歴史の相互の結びつきがよく見られる。このような歴史の面白さを高橋先生は「歴史のダイナミズム」と呼んでいた。
最後に、筆者は歴史を知ることはこれからの未来を描くのにきっと役に立つはずであると思う。孔子曰く、「故きを温ねて、新しきを知れば、以って師と為るべし」と。講義ではかつての東北大生の姿も紹介され、山のように積み上げられたノートは圧巻だった。先人たちの行為は、これからの自分を描く一つの材料になるはずだ。高校生諸君も、歴史について得意苦手ではなく魅力を感じてみてほしい。
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