本学の理学部化学科は1911年の開学以来、「研究第一主義」をモットーとして研究重視の学風を守り続けてきた。研究分野はひとくちに化学科といっても無機化学や有機化学、生物化学や物理化学など多岐に渡る。
その中で今回は、分析化学研究室の西澤精一教授に話を伺った。分析化学とは物質を測ることにより、その特徴を知るための方法を追求する化学の一分野である。西澤教授らの研究室ではバイオ分析化学をテーマにヒトの遺伝子を対象として、個々の変異を調べる検査薬の研究・開発を行っている。
ヒトではDNAを構成する塩基配列が一つ違うだけでも形質に大きな違いが表れる。そのうちこれまでの研究でいくつかの病気についてかかりやすさや薬の効きやすさに関わる遺伝子が見つかっており、疾患リスクをあらかじめ調べることが可能になっていた。しかし現在用いられている方法では経済的な負担が大きく、また精度の向上についても課題が残されている。教授らは安価で正確な調査を可能にするため、より有用な試薬の合成を目指す。また西澤教授は、ヒトをヒトたらしめている要因がゲノムDNAに加え、翻訳されず遺伝子として機能しないRNAにもあると解明されたことに注目。非翻訳RNAとよばれるこのRNAのはたらきを調べるために、検査薬を開発しようと試みている。
バイオ分析化学に興味をもったきっかけとして西澤教授は、「もともとは水素結合が水中では働かないのに生体内では働くことが不思議で、興味を持った」と語った。水素結合はDNAやRNAの構造にも大きく寄与している。この特性をどうにかして世の中へ役立たせたいと思ったのだという。「自分が不思議だと思うことや面白いと思うことを好きに研究できるのが理学部のよいところだ」と声を弾ませる。
「たとえ自分の所属と違っても、それぞれの得意分野を見つけられれば」と西澤教授は本学の総合大学としての特性にも目を向ける。在学生のなかにはポテンシャルが高く、一方で自分を過小評価しがちな人も多いという。「現実は甘くないが、自分を小さくまとめようとせず、楽しみながら可能性を突き詰めてほしい」と、在学生、そしてこれから入学する学生へ期待をよせた。
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