筆者が紹介する基礎ゼミは、「合巻(江戸時代の劇画)『傾城水滸伝』の注釈書を作る」である。合巻とは、江戸時代の化政文化期に読まれた、風刺滑稽を主とする大人向けの絵入り小説だ。
中を開くとページの中心に大きく描かれた絵が目に入る。その周りには主に平仮名で物語が書かれているが、使われている平仮名は崩し字であるため現代の平仮名とは異なり、簡単には読むことができない。この崩し字を現代の文字に置き換える翻刻という作業が基礎ゼミの主な活動となる。
受講者は曲亭馬琴が著した『傾城水滸伝』の三編の中から見開き1ページずつ割り当てられ、各自で翻刻を進めていく。翻刻では現代の平仮名に対応する崩し字をまとめた字典を使うが、崩し字の読み方がわからないと引けないので、初めのうちは作業がなかなか進まない。
それでも教授の添削を受けながら翻刻をしていくと、次第に字典を使わなくても読める文字が増え、内容もわかるようになってくる。筆者も、何が書かれているのか全くわからなかった文章が物語として読めたとき、初めてこの基礎ゼミが楽しいと思えた。最終的には各自が翻刻したページを合わせて一冊の注釈書が完成する。実際の合巻と同様に紙を糸で綴じて製本する作業も貴重な体験となるだろう。
基礎ゼミの魅力は、学部に関係なく、興味のある分野で専門的な体験ができることである。東北大学に入学した暁には、自分が選んだ基礎ゼミならではの楽しさを感じてもらいたい。
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